現存する最古の映画館 高田世界館にて観客無しでシューティングした“まだ誰も観た事のないLIVE”と佐渡に渡り各地で行ったフィールドレコーディングを収めた10年振りの映像作品に、さらに今年6月に行われ完売したLonesome鎌倉公演を収録したLIVE CDを合わせたCaravanの原点で核(コア)でもある弾き語りを余す事無くコンパイルしたLonesome Caravan集大成作品ついに完成!!!

SFMD-004 ¥5,556(本体価格)+tax

Disc 1 DVD

(本編68分+ボーナスソングス16分)
01 Well-come
02 Back to roots again
03 サンティアゴの道
04 Stay with me (新曲)
05 その瞬間
06 Saraba
07 Bohemian blues
08 Seed
09 Magic
10 もっと遠くへ

★BONUS SONGS
(Caravan 10th Anniversary @渋谷公会堂)
01 Music save my life
02 Key of life
03 光の舟に乗って
★オーディオコメンタリー

Disc 2 LIVE CD

(全12曲 65分)
LIVE EXTRA Lonesome鎌倉@鎌倉芸術館のLIVE CD
01 Message
02 Trippers anthem
03 The story
04 Esperanza
05 Love & free world
06 Camp
07 その瞬間
08 Folks
09 Over
10 サンティアゴの道
11 アイトウレイ
12 Trippin’life

※レザートランクTRIP特殊パッケージ仕様
20Pブックレット封入 ライナーノーツ(兵庫慎司)


【ノマドの窓 販売協力店舗一覧】





「難しいことをすごくシンプルにやるのが、今はいちばんいい気がしていて。
すごく大きい正解、大きいテーマを、ポップだったり、子供でもわかるような
言い方だったりで、シンプルに伝えられたらいいのにな」

Caravan、HARVEST10周年作品『ノマドの窓』と、これまでと現在と未来を語る

 2016年 LIVE EXTRA“Lonesome鎌倉”公演を終えたCaravanは 自分と音楽、自分と旅との距離を確かめるべく小さな旅に出た。
 現存する日本最古の映画館 高田世界館でオーディエンス無しでのライブを行い、佐渡にわたり各地でフィールドレコーディングを重ねた。
 本作はその旅の記録である。

 Caravanの最新作『ノマドの窓』。映像作品1枚とライブ音源1枚からなる作品だが、前者=映像作品の方は、そのようなテロップから始まる。
新潟県上越市にある築105年・日本最古級の映画館、高田世界館で2016年7月11・12日に、お客を入れずにひとりで行ったライブの模様と、7月13日に佐渡で行ったフィールドレコーディング(要は外で歌うこと)の模様がベースになっている作品。そこに、2016年6月11日鎌倉芸術館大ホールなどでひとりで行ったライブの映像や、イメージショットや、フィールドレコーディングをする場所を探している画などがミックスされていく構成になっている。特典映像として、2014年10月4日渋谷公会堂のデビュー10周年ライブから、バンド編成による3曲も収録されている。
なお、ライブ音源は、前述の鎌倉芸術館大ホール『Caravan LIVE EXTRA SPECIAL 2016“Lonsome鎌倉”』から12曲を収録したアルバムである。

 以上、『ノマドの窓』の説明でした。では以下、なぜこのような作品を作ったのか、セルフ・マネージメント・オフィスHARVEST設立から10年にあたる2017年の1月現在、どのようなことを考えているのか、ここまでどのように活動してきたのか、この先どんなビジョンがあるのか、などなどについてCaravanにきいた、超ロング・インタビューです。

普通に誰かが観に来たライブをパッケージにして作品化しても、
あんまりありがたみがないっていうか

──『ノマドの窓』って、客観的に捉えると不思議なものじゃないですか。映像作品だけどMV集じゃない、通常のライブでもない。お客のいない映画館でひとりきりでライブをやっている画が中心で、野外でひとりで歌っている曲も入るというのは。

Caravan:そうですね。友達とか家族とかにも「ライブDVD作って、でもお客さんいなくて、映画館で──」って言えば言うほど、みんなどんどん顔が「?」マークになっていって(笑)。説明しにくいですよね。
何しろあの映画館、高田世界館がすっげえいいところで、気に入ってしまって。弾き語りツアーのファイナルで、あそこでやったんですけど、その時に、ここでMVなりライブなりを撮影したいなって。そのまま時が1年ぐらい経ったんですけど、ここらでちょっと……そういえばライブの映像みたいなものって出してないな、と。
今年2017年でHARVEST10周年っていうのもあるし、その節目で今の自分の姿みたいなのを……バンドでバーンってやるんじゃなくて、すごくソリッドな自分の原形を映像で残しておきたいな、っていうのもあって。で、「じゃああそこで撮ろうよ。番場(秀一・映像ディレクター)くんに頼もうよ」っていう話になっていった感じかなあ。
たとえば今って、ライブの映像って簡単に観れちゃったりするじゃないですか? Youtubeあるし、フェスなんかにしても終わった翌週にはもう放送とかでやってたり。そういうのを考えると、普通に誰かが観に来たライブをパッケージにして作品化しても、あんまりありがたみがないっていうか。だったら映画を撮るように、1曲ずつ生演奏して、演劇を撮るような感じでライブを撮るには……「じゃあオーディエンスを入れなければいろんな角度から撮れるな」とか。
あと「ライブってなんだろう?」っていうこともあって。オーディエンスとのコミュニケーションだったりキャッチボールだったりで、一緒に世界を作っていくのがライブだって普段は言ってんだけど、音楽を演奏するっていう意味では、またそれとは違う面もライブにはあるから。もうちょっと個人的な面というか、自分の出した音に向き合う感じっていうのを撮ってみてもおもしろいのかな、そういうライブ・ビデオがあってもいいのかな、というのはあって。

──先人のミュージシャンで、これに近いような作品を作った人はいたんでしょうかね。洋楽でも邦楽でも、僕は知らないんですけども。

Caravan:いやあ……どうなんでしょうね。たとえば、ゲリラ的に外でライブをやって、それを撮って、っていうのはあると思うけど、この『ノマドの窓』のようなことは、なかなかやらないですよね……なんでやっちゃったんだろう?(笑)。
あ、でもね、シガー・ロスのビデオで、田舎の方に行って、街のひなびた教会で演奏して、そこに街のおばちゃんとかが入ってきちゃって観てるみたいな、そういう作品があって。
俺それがすごい好きで。関わるスタッフみんなで観たりはした。ミュージック・ビデオですけどね、生演奏の。そういうものを作れたらな、と思いましたね。

──やり心地はどんなもんでした?

Caravan:あ、でもね、おもしろくて。すごく集中してできましたね。カメラマンもマネージャーも、いつもやってくれてるローディーも、カメラに映らないところに座ったりしてるから。そこに向けてやってる感じはありましたね。

──映像、高田世界館以外も入ってるじゃないですか。僕はこの作品で「フィールド・レコーディング」という言葉を初めて知ったんですけれども。

Caravan:まあ、新潟まで行ったんで。海の向こうには佐渡ヶ島が見えてるし。そのちょっと前に旅行で佐渡に行ったんですよ。で、「すげえいい場所いっぱいあったよ」っていう話を番場くんにしたら、番場くんがいつの間にかロケハンに行ってくれて。「じゃあ高田世界館から近いから、行こうよ」と。
やっぱり変わった場所がいっぱいあるんですよね。抜け殻みたいな、廃墟のような港があったり、金山の跡、銀山の跡があったり、選鉱所っていう鉱石を選り分けるところがあったり。本当に、『(天空の城)ラピュタ』のような建造物が、ほったらかしで残っていたりして。
そこらへんで……普通にインサート映像で、そこらへんを歩き回ってたそがれてる画とかを、高田世界館のライブに入れるのもねえ? みたいになって。じゃあそこで歌おうよっていうことになって、エンジニアを連れて行ってガンマイクで録ったりして、それを織り交ぜて行こうかなと。

──『ノマドの窓』のライナーノーツにも書かせていただいたんですけれども、こういう作品を出せるというのも、インディペンデントでやっている強みなんだなと思って。

Caravan:そう言われて「確かにそうだな」って思ったりしたんですけど。確かにメジャー・レーベルだったら、「何それ? そんなの売れないよ」とか言われちゃいがちじゃないですか、こういう位置づけしづらい作品って。でもそういうの関係なく……HARVESTって言ったって俺を含めて3人だし、その3人が「いいんじゃないの?」ってなれば出せるわけで。タイミングとかも……自分たちなりに考えて出してはいるけど、でもたとえば今作った曲がどうしても来月出したい、ってなったら出せるわけだし。そういうところのフットワークの軽さというか、リアルタイム感というのはすごく大事だなと思っていて。
なおかつそれが……悲しい話だけど、メジャーだと1年ぐらい売れないと廃盤になっちゃったりするじゃないですか? そういうことがない、ゆっくり、聴きたい人が聴きたいタイミングで手に入れられる状況を作りたいなというのがあって。それがインディペンデントの強さだと思うし、底力だと思うので。

なんか理屈っぽいものに対して、嫌気がさしているというか

──これからはこんな曲を書きたいとか、こんな音楽を作りたいというのは、漠然とでもあったりしますか?

Caravan:そうですね……あの、難しいことをすごくシンプルにやるのが、今はいちばんいい気がしていて。なんて言うのかな、難しいことを難しくするんじゃなくて、簡単なことを難しくするんじゃなくて、なんかすごく大きい正解、大きいテーマを、ポップだったり、子供でもわかるような言い方だったりで、シンプルに伝えられたらいいのにな、っていうのは思っていて。すごくそこは考えたりはしますけどね。
ここ1~2年かな、なんか理屈っぽいものに対して……なんて言うのかな、嫌気がさしているというか……うまく言えないんですけど、大事なことって複雑だけどシンプルだったりするじゃないですか? そういう、シンプルに表現したいっていうのはあって。そこらへんのことは、すごく考えます。

──「サンティアゴの道」にそれに近い歌詞がありますよね。

Caravan:あの頃とかも、そんなことを考えてましたね。でも、もっともっとそれをできんじゃないか、とは思っていて。

──売れる売れないをあまり考えない、そういうことに興味のないアーティストだというイメージは、まあ、あると思うんですけども──。

Caravan:そういうセンスがないっていうか(笑)。考えたところでできないし、というか。

──だからインディペンデントで始められたわけですけども、最初にある程度の勝算みたいなものってありました? 「最悪俺とスタッフ2人ぐらいは食えるだろう」くらいの。

Caravan:えーと、HARVESTに関しては、勝算てものはまったく考えてなくて。でも、もともといた事務所も、インディーの時にリリースしてくれてた会社で、巨大なプロダクションにいたわけじゃないので、そんなにスタンスは変わってなくて。
でもそのあと……たとえば自分のスタジオを作ろうと思った時とか、メジャーをやめてレーベルも自分たちでやっていこうと決断した時は、けっこういろいろ考えて。震災もあったし、いろんな意味で、大きい船よりも小さい船で、原始的だけど最先端みたいな動きをしたいな、というのがあって。
それは、「いつかそういうふうなことをやろう」と漠然と思ってたんだけど、「ジョニー(マネージャー)、これ今じゃねえの?」っていう感じに、すごく自分の中で焚きつけられるものがあって。そこでジョニーが「いや、そこまでは僕付き合えませんよ」ってなったらしょうがないな、と思ってたんだけど、「いいっすね、やりましょう」って。
だから、なんかそういう「今やりたい」というか「今しかない」みたいなグルーヴ感はあって。その時、なんかポーンと動いちゃう勢いみたいなのが自分の中にあったんですね。勝算も何も考えてなかったけど、でも音楽業界の人は口を開けば「CDが売れない」とか、ネガティブな話しかしないのも、もううんざりしてたし。
じゃあ自分たちなりの「売れる」っていうのをやろうよ、そりゃあ今までみたいに何十万枚も何百万枚もCDは売れないだろうし、売れなくていいんじゃねえの?と思っていて。自分たちなりの「売れたね!」っていう手応えを噛み締められる規模で、少しずつそれをやっていこう、というか。何しろ、やってる手応えを感じられる活動がしたかったから。
だからすごく、シンプルに……はじめはいろんなこと言う人もいたけど。「そんな甘くない」とか「そんな理想的なことは成立しない」とか。でも、うちらなりの正解をやればいいし、うちらなりの正解がなんなのかいまだにわかんないし、それも変わっていくだろうし。
だから、音楽だけじゃなくて、音楽のまわりにある空気感だったり、方法論だったり、たとえばCDが1枚売れて送った時の、その送り方だったり。そういったところまで含めてのCaravanの活動、っていう空気作りができたらな、っていうのはすごく考えてたんですけど。活動すべてがCaravanとして発するメッセージになればな、という。

先のことを考えたら、すっごい不安になっちゃって、
夜とかプルプルして眠れなくなっちゃって

──レーベル独立して今年で6年ですよね。「俺、6年後も日比谷野音でワンマンやれてるかなあ」みたいなことは考えなかった?

Caravan:あんまり考えなかったですよね、先のことは……あ、でも、こないだジョニーとも話したんだけど、今年の1月……年が明けて、不意にすっげえ先のことを考えた1日があって。5年後とか、10年後とか、いくつまで音楽をできんだろう?とか。考えたらすっごい不安になっちゃって、夜とかプルプルして眠れなくなっちゃったりして。
「俺ヤバいかも」と思って、しばらくしてジョニーに会った時に、「こないだこんなことがあったんだよね」って話をしたら、「いやあ、先のこと考えてもしょうがないっすよ」って言われたからね(笑)。「そういうことある?」「いやあ、あるけど、まだ起こってないことを考えてもしょうがないっすよ。とりあえず今日と明日ぐらいのことを考えて生きていけばいいんじゃないっすか?」とか言われて、「さすが!」と思って。確かにそうだなと。マネージャーがこれだからいっか、と思って。

──でもハタから見たら、DIYで活動しているミュージシャンの中でも、すごく強気な方法でやっている人に見えますよね。

Caravan:(笑)いや、自覚はないですけどね。すごくソフトにやってますよ。

──だってCDを流通に乗せない、自分の知ってる人の店にしか置かないし、ネット通販も公式サイトでしかやらない、配信も一切やらないっていう。

Caravan:やる気あるんだかないんだかわかんないですよね(笑)。でも、たとえば流通会社を通したことで制限ができたりすることもあるじゃないですか。著作権の管理とかもそうだし。
あとはなんか、顔が見えるところで広がってほしいっていうか。それこそ震災後に自分がレーベルを立ち上げようと思った時の気持ちと、同じような気持ちでやってる街の小さいお店っていっぱいあって。いわゆるデパ地下の一店とか、大型百貨店に入るんじゃなくて、街のパン屋だったり、街の雑貨屋だったり、洋服を作って売ってる子だったり、バーだったり。そういう人って、話してみると、根本的な理想とか思想とかが似てる人が多くて。よく気持ちがわかるというか、悩みとかつらさみたいなものも、すごく理解できるものが多いし。かといっていろんなものに迎合してやりたくはない、自分の理想をスタンダードなものに押し上げたいんだ、っていう人たちって、街にはいっぱいいて。
そういうところで、もしCDが売られていたら……たとえばそこのお店で何かを買うってことは、そういう人たちに対する清き一票、みたいなものもあって。お店を選ぶっていうのは「ここで買いたい」「ここで時間をすごしたい」っていう、そういったことをもうちょっと普通の考え方にしたいというか。
「コンビニでいいじゃん」じゃなくて、わざわざそこに行って、わざわざ話をして、そういったコミュニケーションがそこで生まれて……自分にとっての心ある人たちの、目に見えない商店街みたいなのができてくる気がして。そういったものができたらおもしろいな、というのがいちばんですね。

──その理想へ向かうことができるのは、裏を返せば自分のライブなり音源なりに圧倒的な自信があるということ? 「旨いもの食わせるんだから客は来るだろう」みたいな。

Caravan:いや、自信はわかんないけど、自分がそうだからかな。同じカレーでも「あそこの店が旨いから行こう」って、わざわざそこに行きたくなる人だから。自分みたいな人も、100%のうち1%ぐらいはいるんじゃないかな、とか。
ただ理想なだけかもしんないんですけどね、ハナから「ムダムダ」って言われて「ああ、ムダだよね」って既存の道を行くよりも、そっちの方がおもしろいかなと思っていて。手応えが味わいたいのかもしれないし。「届いた!」とか「届かなかった!」とか「ああ、やりすぎた」とか。そういったものを、いちいち感じたいっつうか。そういうのをいちいち感じらんないと、「どうなの? 大丈夫なの?」って、よけい不安になるというか。
だから、極端なんですよ。「インディーズなんだから自分でやんなきゃ」っていうのとかさ。でもインディーズだとは思ってないし。インディペンデントだと思ってて。要は独立していたいというか、自己完結できる人間でいたいというか。

お客さんが時代に逆行している感じで、いいなって

──2016年6月の鎌倉芸術館は売り切れたし、10月1日の日比谷野音も……メジャー所属の頃から含めても、ここまでいっぱい入ったことあったっけ?と思ったんですけれども。

Caravan:そうでしたかね?

──数えたわけじゃないけど、僕の体感としては。

Caravan:そう言われちゃうと、来年とか怖いじゃないですか(笑)。「去年の野音がピークだったなあ」なんてことになっちゃうかも知れないですよ?

──だから、いい意味で、増えてる理由がわからないというか。

Caravan:はははは! あと思うのが……10年以上やってきて、そういう空気作りができてきたのかもしれないけど、地方に弾き語りとかで行くと、お客さん、けっこう隣の県とかから来てくれて、「明日1日観光して帰ります」みたいなお客さんが増えていて。ただライブに行くっていうんじゃなくて、ライブついでにちょっと旅しようよ、みたいな話をよくきくんですよ。それがおもしろいっていうか、うれしくて。

──Caravanみたいな人が増えている。

Caravan:みんなウロウロしてる(笑)。でもそういう楽しみ方 せっかくその街に行くんだから、その空気感は味わって帰りたいっていう人が増えてんのは、今なかなか旅に出ない人が増えてる時代に逆行している感じで、いいなって。
みんな旅行におカネ使わないとか、家を出ないとか、あるじゃないですか。飲みに行かないとか。それもいいけど……今ネットで検索すればいろいろ知ることができるけど、それって本当に知ってるって言えんのか? みたいなところがあって。「一回行ってみたら?」っていうのを、お客さんが実行している感じがあって、おもしろいなあと思いますね。

旅って結局ひとりじゃないですか。ひとりの時間が多いじゃないですか。
それが好きなんだよね、たぶん

──たとえばCaravanにとって旅って大きなテーマになってるけど、旅してるってことは居場所がないってことでもありますよね。

Caravan:そうですね。あと、旅って結局ひとりじゃないですか。ひとりの時間が多いじゃないですか。それが好きなんだよね、たぶんね。ひとりになると、人のことを考えたり、自分のことを考えたり、考える時間がいっぱいあるじゃないですか。だから、その「自由と孤独」という意味では、それがいちばん感じられるものが旅だったりするから好きなのかな、と思っていて。
かといって自由気ままなひとり旅だけが好きなわけじゃないし。そこでの人との出会いだったり、一期一会があるから感じられるものだったりもするし。

──旅が好き、常に孤独、定住先がない、みたいなのはずっと変わらないですか?

Caravan:(笑)。あ、でも、子供の頃からそういうとこはあって。なんかこう、集団に馴染めないっつうか。っていうのは小学校の時とか、けっこう病的にあって、学校に行けなくなっちゃった時とかあって。っていうのは、南米から帰ってきて、まず日本の空気感に全然溶け込めないっていうか。かといって南米でも溶け込んでたわけじゃなくて。日本人だし、シャイだし、向こうの自己アピールしてなんぼみたいなノリについていけなくて、「ああ……」みたいな感じだったんだけど。日本に帰ってきたら逆に「自分を出すな! 馴染め!」みたいなあの空気にも、全然馴染めなくて。「どっちだよ!?」みたいになって。それがあって……なんかずっと圧迫感を感じてる幼少期だったんですよ。だからひとりで遊んでたり、砂場でずっと穴を掘ってたりするような子だったんで。暗い子だったんだよね、たぶんね。今もそれは、根本的には変わっていなくて。
でも、暗いんだけど、さみしくてイヤだなとか、友達ほしいなとかじゃなくて、それがすげえ楽しいの、実は。全然つらくないの、ひとり遊びが。もうブワーッてなってるから、頭の中が。そういう感じではあるかもしれないです。

──今でも「ここなら居心地いい」っていう場所を探している感じはあります?

Caravan:探している感じはあって、それで「ないから自分で作ろう」っていうので、独立心が強いのかもしれないし。「この場所のここはいいんだけど、ここはどうしてもイヤ」とかもあるじゃないですか? 今だって「ここ、もっとこうするべきなんじゃないか」っていうのはあるし。だけどそれは、人数が増えれば増えるほど、形にするのが難しいじゃないですか。だったら必要最小限の人だけで、っていうのもあるのかもしれない。だから、大きいものへの憧れみたいなのは全然なくて、小さいけどブレないものになればな、その方が大きいものよりグルーヴするんじゃないかな、みたいな感じはあるんですけどね。まあ、理想ですけど。

(インタビュアー兵庫慎司)

前は泥の舟だったんですけど、今は紙ぐらいにはなったかなと(笑)。
「まだ浮かんでるぞ」っていう

HARVEST・Slow Flow Musicのパートナーに訊く、
活動・運営まですべて含めての「Caravanの表現」

橋本 毅(株式会社ハーベスト/ Slow Flow Music代表取締役)
Caravan のセルフ・マネージメントHARVEST設立から10年、自主レーベルSLOW FLOW MUSIC設立から6年。その代表でありCaravanのビジネス・パートナーであるジョニーこと橋本 毅に、HARVESTとSlow Flow Music、それぞれの始まりと現在、そしてこれからについて訊いた。

HARVEST誕生の経緯

──もともと、エイベックスから独立してレーベルSlow Flow Musicを作るよりも前に、HARVESTを設立されたじゃないですか。その時はどのような経緯で?

橋本:あの……僕は、いちばん最初は、前の事務所、アーロンフィールドの社長の向後さんから、Caravanのマネージメントをやってほしいって言われて。「絶対ジョニーと合うから」って、音源を置いて行ったんですよ。それがアーロンから出ていた『RAW LIFE MUSIC』と『Trip in the music』と『Heavenly』だったんです。
で、聴いて……僕は普段まったくこういう系統の音楽を聴いてなくて。その前もラウド系のバンドのマネージメントをしていて、うるさいのばっかり聴いてたんですけど、Caravanを聴いてびっくりしたんですよ。すごくよくて、スッと自分の中に入ってきて。
その時Caravan、メジャーが決まりそうで、メジャーの対応ができてライブの制作ができるマネージャーを探していたみたいで。で、代々木Zher the ZOOの対バンかなんかのライブを観に行ったら、それもすごくよくて。
それで「僕でやれることでしたらぜひ」って言ったら、いきなり向後さんが……僕、前のバンドのマネージメントで、SEEDという自分の会社を持ってたんですけど、そこでやってくれって言われたんですよ。そんなのいきなり無理じゃないですか? 会ったばかりなのに。だから「無理ですよ、ある程度一緒にやって、お互い人間性もわかって、やれるなって思えないと」って。「じゃあ最初は業務委託でやってくれ」って話になって、僕はアーロンに出勤するようになって……っていうのが最初だったんです。

──前の社長は、Caravanのメジャーデビューと同時に手放すつもりだったんですか。

橋本:そう、向後さんは不思議な人で、インディー時代に自分が見つけたアーティストがある程度大きくなってメジャーに行く時は、もう手放したいんですって。他のアーティストもそうなんですよ。すごい変わってるんですよ。
それから委託って形でマネージャーやって、2年ぐらい経ってから「お互い性格もわかって信頼関係もできたんで、じゃあ自分たちでやります」ってHARVESTを作った、ってことですね。

Slow Flow Music設立、インディペンデントの道へ

──エイベックスのrhythm zoneをやめて、Slow Flow Musicを作ったのは?

橋本:HARVESTを作って4年ぐらい経ってたんですかね。そのメジャー契約の、1年に1枚フル・アルバムを出すっていうのは……まあ難しいですよね、自分で曲を書いて音楽を作る人にとっては。なんでもいいわけじゃないじゃないですか、曲のクオリティが。それを考えると、いずれは自分たちのペースでやれるスタンスでやろうね、っていう話はしていて。じゃあお互いそういう時が来るまでの準備をしておこうと。それでしばらくは、Caravanはスタジオを作ったり、僕は僕で方法を探したりしていたんですけど。
で、震災後の2012年に、Caravanに「今だと思う」って言われたんですよ。僕はもっと、5年先ぐらいだと思ってたんです(笑)。スタジオは整ったけど、どういうシステムでやろうかっていうのを、まだ決めきれていなかったし。「でもエイベックスは契約延長しようって言ってるよ」っていうのもふまえて「今だと思う」って言うから、考えて、「わかった」と。
で、エイベックスに契約更新しませんっていう話をしたら、「移籍ですか?」って言われて(笑)。「移籍ではないです、自分たちでやります」って言ったら、びっくりされて。偉い人が5人ぐらい事務所に来て、「どういうことですか?」って。それで説明したら、まあ納得してくれて。っていう流れですかね。
それで、今後のやり方をCaravanと話す時に……「今まであたりまえだと思ってたことを、お互い考え直そう」って話したんですよ。CDをCDショップで売らなきゃいけない理由ってなんだ? みんなそうしてるけど、そうじゃなきゃいけないのか? とか。みんな著作権は管理会社を通すけど、それもいらないんじゃないか?とか。あたりまえに、考えずにやっていたことを、全部考えようっていうところから始めたんですよ。
「じゃあCDの売り方はどうしようか」「ライブ会場を基本にしよう。でもお客さんとのつながりはちゃんとしたいから、オンラインショップも整理して、ちゃんと情報が届けられるようにしよう」とか。

──配信をやらないことにしたのは?

橋本:Caravanも僕も物がけっこう好きで、こだわっていたので、そこはこだわり続けようと。お客さんに「もう配信やってくれよ!」って言われるまでは、やらずにいこうねと。
まあ、Caravanは勝算はなかったって言ってたけど……僕もどうなるかわかんないと思ってたんですけど(笑)。ただ、その時は、あたりまえだと思ってことを見直す、ということがすごい大事なんだな、と思ってましたかね。

──「コケたらコケたでいいや」っていう感じだったんですか?

橋本:いや……でもね、やれそうな気は、なんとなくあったんですよね。お客さんとのつながりは、アーロンの後半の頃から作れていると思ってたんで。っていうのは、ファンクラブとかはないんですけど、いまだに僕ら、ライブとかのアンケートに住所を書いてくれた人全員にハガキを無料で出してるんですよ、リリースとかライブが決まるたびに。超アナログなやり方ですけど、それでダイレクトにつながっていて、お客さんがちゃんとリアクションしてくれるので。

──そのハガキの数って増えていたりします?

橋本:じわじわ増えてますね。昨年の日比谷野音も、「今回がいちばん入ってたよね」って言ってましたけど、確かに今まででいちばん多かったんですよ。それは、何が起因してるのかわかんないですけど……まあ、Caravanみたいなスタンスの音楽が好きな人が、ちゃんと反応してくれ始めたのかな、とか思ってるんですけどね。

──そういえば、配信だけじゃなくて、定額制の音楽配信サービスにも曲を出してないですよね。

橋本:やってないです。断ってますね、いっぱい話は来たんですけど。それもCaravanと話したんですけど……メジャーってありがたいことにいろんな人にお知らせすることができるけど、情報が飽和しちゃってると思ったんですよ。本当にほしい人にも届いてるけど、その情報を必要じゃない人にも届いてるから、それをいったんまとめましょう、と。売ってるところがこことここしかない、ならここで買ってくれるよね、本当に必要としている人ならここに来てくれるでしょう──っていうふうに、筋道を整理しましょうと。だからその分、わかりやすくなったのかもしれないですね。
まあ、Caravan自身がああいうタイプなので。テレビに出たいとか東京ドームでやりたいとかいうタイプでもないし、自分のやりたい場所で、お客さんにちゃんとそれを楽しんでもらえて、っていう。それだったら、今のやり方が合ってるのかな、という。
Caravan、野心とか欲望がないわけじゃないと思うんですけど、それを主としないというか。そういう人なので、それがいいのかな、という気もしますね。

──さっきのCaravanのインタビューで出た、橋本さんが「先のこと考えてもしょうがないっすよ」と言ったっていう話。社長としてはそれでいいのか?っていう気がしなくもないですが(笑)。

橋本:はははは。いや、そうなんですけど、Caravanにはああ言いましたけど、2年先ぐらいまでは考えてますよ。

──2年だけ?

橋本:(笑)いやいや、だって、3年後とかわかんなくないですか? 何があるか。僕ももう今年49だから、ポックリ逝っちゃうかもしれないじゃないですか?

──でも、橋本さんもキャリアあるわけだから、これまでにいろんな成功例も失敗例も見てきたわけだし、ある部分はご自身で体験もしてきたわけじゃないですか。

橋本:ああ、まあねえ。

──その中でもっとも「それいちばん獣道だから!」「そこ誰も通ってなくて道がないから!」っていうところに進んでいるような(笑)。

橋本:はははは。でも、ちょっと前にCaravanもMCで言ってたけど、前は泥の舟だったんですけど、今は紙ぐらいにはなったかなと(笑)。「まだ浮かんでるぞ」っていう。もうちょっと、木ぐらいになるといいんですけどね。
あと、望んでることは……そうだ、2日前にCaravanと話したんだけど、2016年にやったライブの8割が野外だったんですよ。

──はははは!

橋本:笑っちゃった。「今後はもうちょっと屋根あるとこでもやろうね」って。

(インタビュアー兵庫慎司)

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